54. 「患者」と「医者」のリスク・マネージメント|横浜市青葉区の脳神経外科「横浜青葉脳神経外科クリニック」

  • 【ご相談・お問合せ専用ダイヤル】

    0459052272

    診療
    受付時間
    月~金8:30~18:00 /
    8:30~12:30
    ※土曜午後、日祝休診
  • 【予約専用ダイヤル】
    ※MRI・MRA検査予約の方
    ※診療予約の方

    0459052273

    電話
    受付時間
    月~金9:00~18:00 /
    9:00~12:30
    ※土曜午後、日祝休診

コラム一覧

54. 「患者」と「医者」のリスク・マネージメント

2015.06.09

医者稼業をしていると・・・と言っても、たかが四半世紀なのですがいろいろな人々と出合います。

医者稼業、などと言うと患者さんに失礼な言い方になるかもしれませんが「稼業とは、生活費を得るための仕事」と定義されるならば私の職歴と現職は、医者しかありませんので、やはり医者稼業です。

その医者稼業を通して出合う多くの患者さんは、診察室だけではなく街でばったり出合うことも多いものです。

ある日の午後の昼下がりに、クリニックの近くにあるミスター・ドーナッツで久しぶりにコーヒーを飲みながら、シナモン・クルーラーを食べていると通院されている中年の女性患者さんに声を掛けられました。

 「あ~ら、先生、こんなところで・・・
  先生もこんなところに来られるんですね」と。
親しげに会話するその姿は、旧知の間柄の様です。

「こんなところに・・・」とは、店員さんに失礼なそんなことを大きな声で言ったら店長さんからムッとされますよと心の中でつぶやきながら「ええ、ちょっと気分転換に」と返事。

狭い店内で袖擦り合せる距離に、隣り合せで座りながらコーヒーを飲むこの男女の姿は、まるで高校生がデートしているような雰囲気です。
彼女は、さらにニコやかに、そして畳み掛けるように続けて話かけます。

 「こんなところで、ついでで申し訳ないのですが・・・」
  と前置きしながら
 「夫の病気のことなのですが・・・」と。

私は、彼女の名前と病名を思い出すのにしばらく時間を要しましたが会話をしているうちに彼女自身の治療が、おぼろげながら想起できるようになりました。
しかし、顔や姿も見たことのない旦那さんの症状を質問されても困ってしまいます。

でも、そこはサービス精神が旺盛な私は、診てもいない患者さんの治療方針をついお節介にも、あ~だ、こ~だ、とお説教を垂れるのでした。
気分転換に来たはずのコーヒータイムが、私の頭脳は、いつの間にか真剣モードに。

この治療方針は、「確かな診療」ではなく、「当てずっぽー診療」ですので間違いなく誤診でしょうから、どこか信頼できる医療機関に早期に受診されることを心からお勧めします。

だから・・・
というわけではないのですがその時の「架空診療」のお代は、出血大サービスです。

患者さんの中には、猜疑心の旺盛な人がいればその対極に、すべて医者にお任せで、一人の医者の言葉を妄信する人がいます。
実は、この妄信が、極めて危ない、危険なパターナリズム。

だって、私が・・・私自身を今一つ信用してませんから。

信用していない私自身から発する言葉を私が危ないと感じる時が、いつもではありませんが、あるのですから診てもいないのに、「当てずっぽー診療」を架空診療する私のような医者の言葉を全て妄信するのは、是非ともお止めになった方が、身の安全です。

唯一絶対の神を信じる一神教は、間違いのない絶対不滅の神であればこんな幸せな、有り難い存在はないでしょう。
でも、この唯一絶対の妄信が、危ないのです。

日本には、八百万(やおろず)の神がいるとされています。
文字通り800万も神様がいれば、繁盛していない神は「さぞかし(経営が?)大変だろうなあ」と密かに同情しつつ・・・

わずかなお賽銭で、数カ所の神に、多くの願い事を叶えてくれますように、と祈る自身も「とっても(性根が?)卑しい奴だなあ」と思います。

大手のブランド力のある神様が必ずしも願いを叶えてくれるとは限りません。

逆に中小の、あるいは零細の神様が意外と自身の感性にピッタリ合ったりもします。

日本では、今、医者不足が、叫ばれていますが医師免許を持っている人が、20万人以上もいるそうです。

こんなにたくさんの医者がいて、こんなに多くの医療情報が、氾濫していても
 どんな医者が・・・
 どこの場所で・・・
 どんな診療を・・・
如何なるスタンスで行なっているのか、が分かりにくい。

だから・・・
医者の数が足りない「医者不足」ではなくて医者を予測できない「医者不測」になっているのではないか、と思います。
不足とは、欠けていること。不測とは、計りがたいこと。

大手のブランド力のある病院にいる一人の医者だけに依存せず院内が、ガランとして、恵まれない、経営が!苦しそうに見える患者数が、少ない中小の、あるいは零細の医者にも診てもらうことで感性にピッタリ合った出合いが、意外にあるのかも。

これは・・・
境内が、ガランとして、恵まれない、経営が?苦しそうに見える信者数が、少ない中小の、あるいは零細の神様が、なんだかホッと落ち着けてお賽銭が、価値あると思えるように。

多くの神様が、住む日本の「多神教」のように今の日本では、多くの診療科が、力を合わせて協力する「多診協」が是非とも必要なのではないでしょうか。

患者さんに申し上げたい・・・
『一人の医者に依存したら危ないぞ。医者は、無欠な神様ではないんだよ』と。

私自身にいい聞かせたい・・・
『勘違いするなよ。お前は、路端にいる一介の脳外科医に過ぎないんだぞ』と。

患者の「医者選び」のリスク・マネージメントは・・・
医者の「日常診療」のリスク・マネージメントは・・・

医療に限らず、私たちが日常の生活において多くの人を『助け上手』になること、そして多くの人が『助けられ上手』にもなることだと。

それを、節度をもって協力し、共に生きる「共生」が患者と医者のリスク・マネージメントではないかと昨今の医療事情と通年の医者稼業を通じて思うのでした。

2009.11.22

ページトップへ戻る