80.青葉区医師会20周年記念|横浜市青葉区の脳神経外科「横浜青葉脳神経外科クリニック」

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80.青葉区医師会20周年記念

2015.09.01

 青葉区医師会、青葉区メディカルセンターは、平成27年に20周年を迎えました。区民の皆様のお役に立てる様に日々努力研鑽に努めているところです。20周年に合わせて記念会誌を刊行し総務担当理事として拙文を寄稿しました。
 

青葉区の未来医療を支える相互補完

「治す医療」と「生活を支える医療」

 

                                                       横浜市青葉区医師会  総務担当理事  古市  晋

 
⒈はじめに

 青葉区医師会、青葉区メディカルセンターが、20周年を迎えたことは、私たち医師会員のみならず青葉区に居住する全ての区民にとって誠にめでたい慶事です。20年という歳月によって積み上げられた医師会は、陰となり日向となりながら長年支えて頂いた諸先生のご尽力の賜物です。同時に基礎となる土台を支え幕内で黒子役を担って頂いた多くの職員皆様の努力の結晶でもあります。20年に渡り裏となり表となりながら関わって頂いた多く方々には、お一人お一人に心から敬意を表し感謝したいと思います。そのような幾多の人たちの取り組みによって青葉区医師会と青葉区メディカルセンターが、二十歳の節目を迎えた祝賀の祭典を開催出来ますのは、担当理事として誠に光栄に存じます。

⒉諸問題

 さて私たちがおかれた医療環境は、今まで育んで来た20年とこれからの10年は、全く異なる世界が展開すると予想されています。青葉区で医療を行う者は、私たちが仕事をしている如何なる形態(勤務医、開業医)や組織(大病院、中小病院)に関わらず地域医療を傍観者でなく地域共同体として共有しなければならない事態が、目前に迫っています。 それは、10年後に団塊の世代が全て75歳以上になる2025年問題として象徴される人口ピラミッドが、さらに上方へ釣鐘型に移行し、それによって推計では、75歳以上の後期高齢者は日本の人口の4分の1に達し65歳以上の高齢者は人口の3分の1になることで生じる「諸問題」です。

 これまで高齢化の問題は、高齢化率の進展の「速さ」でしたが、 今後の10年では、高齢化率の総量の「多さ」が問題となりさらに複雑にしているのが、高齢者の6分1が一人暮らしで無縁化している高齢者の過多です。男女とも平均寿命が高いと誇らしく思っていた青葉区や近隣区は、そのキャパシティーに収まりきらない高齢者の中に種々の問題を抱えて彷徨える老人が溢れると青葉区や近隣区の街は、一体どのような生活空間になっているのでしょうか。

 私たちが皆等しく年老いて一老人となった時に迎えるであろう世の中の「諸問題」や個人固有の「課題」に備える解は、そう簡単に見出せそうにありません。それは、人によって問題意識に差があり当事者意識の差によって目標やあるべき姿への許容範囲が異なるからでしょう。ある人には大問題でも関心のない人には、全く問題外です。

 しかし来たるべき予想される社会問題を共有し有機体として地域が共同体である意識は、忙殺される日常の診療の中で極めて重要な視点です。多くの人からそんな事は、あなたに言われなくてもすでに分かっているよと冷めた眼で言われそうですが、そのベクトルが種々の理由で共有されず見え難いのです。世の中の諸問題と個人固有の課題に対してある程度許されるまあまあな許容範囲の「擦り合わせ」が、是非とも必要となるのでありましょう。

⒊求められる姿

 以前より私たちが行う医療は、EBM(Evidence-based Medicine)が医療の根幹として重要視されて来ました。それは、医療を行う側にとって当然の理念であって先人の努力によって積み上げられさらに進化する EBM を中心にした医療を展開しない医師があろうはずがありません。しかし医療を行う側が、全ての患者に EBM を当てはめているわけではないはずです。根拠になる証拠が十分そろっていない疾患や治療手段が見出せない困難な疾患、あるいは死に至る病気や精神に関わる病気、さらに多様な高齢者のケアなどEBMを適用できない場合も多々あります。

 この様な時に提唱されているのが、NBM(Narrative-based Medicine )と言われる物語に基づいた医療でした。ナラティブは「物語」と訳され対話を通じて患者が語る病気になった経緯や理由、病気について今どのように考えているかなど各人の「物語」から医療者側は病気の背景や人間関係を理解します。そして患者の抱えている問題に対してあらゆる職種の医療者が全人的(身体的、精神心理的、社会的)に患者の人生観にアプローチしていこうとする臨床手法です。

 医療の世界では、個体差という曖昧さを考慮に入れて「P<0.05(=5%)」という統計用語が、頻用されこの数字が重要視されます。サイエンスとしての医療を支える客観的な判断は、EBM の95%信頼区間に委ね、残り5%はNBM による地域医療に根ざした多くの医療従事者により主観的な個人をクラウドシステムによって支える。病院と病院、病院と診療所、診療と診療、医療と介護、医療と福祉、医療と行政などのあらゆる相互の補完力こそが、次の医療の世界に求められる姿なのだと思います。

⒋キーパーツ

 EBM は疾患を横断的に観た視点であり、NBM は個人を縦断的に観た視点といえます。EBMを重視した「治す医療」とNBMを考慮した「生活を支える医療」の共存が求められる時代変革の中で私たちが実践する医療には、多くの医療従事者と重層的に「相互補完」する根拠と物語に目配りした複眼的思考が必要とされているのです。

 日野原重明先生は「医学というのは、知識とバイオテクノロジーを固有の価値観を持った患者一人ひとりに如何に適切に適応するかということである。ピアノのタッチにも似た繊細なタッチが求められる。知と技をいかに患者にタッチするかという適応の技と態度がアートである。その意味で医師には人間性と感性が求められる」と述べておられます。私たちが、行っている医療は、まさにサイエンスとアートを両輪にして真に患者の満足度を高め、そしてそれは将来自分自身に不可欠な医療になっているはずです。

 私たちが、青葉区医師会と青葉区メディカルセンターで推進しようとしている事業と医療が、他職種と共にジグソーパズルの一つのピースになれば、青葉区民にとって医療環境を新しいステージに押し上げてくれる大きなパーツになるに違いありません。それらが各医療機関の日常の診療の中で有機的に機能できれば、今まさに高齢となられている諸先輩医師はもちろん、これから近い将来高齢者となるまさに現役の壮年医師、そして遠い将来必ず高齢者となる発展途上の青年医師にとって頼もしいキーパーツになるでありましょう。

⒌今後の展開

 最後にこの様な傲岸不遜な記述をしていながら自身が、日常で如何なる診療を展開しているかと自問すれば多忙さに負けて時代の趨勢に現在そして将来付いていけるか誠に心許ない限りです。いずれ種々の課題を抱える彷徨える一老人になった時、医師会とメディカルセンターが一青葉区民として頼りになる機関であってほしいと切に願うものであります。今後の展開において多くの皆様の忌憚のないご助言ご指導を心からお願い申し上げます次第です。

 

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