33. 選択できる幸せと自己責任の重さ|横浜市青葉区の脳神経外科「横浜青葉脳神経外科クリニック」

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33. 選択できる幸せと自己責任の重さ

2015.06.08

日本の医療機関は、患者さんが、いつでも・・・、どこでも・・・、だれでも・・・
病院を受診できるフリーアクセスが特色です。
医療機関の事情で診療している時間や曜日に制限があったり日替わりで担当医師が、変更になったりする場合もありますが基本的には、患者さんが、自分の意志で自由に受診できるのが原則。

関東在住の人が、お気に入りの関西の病院を受診する事は、お金と時間さえあれば可能です。
数ある医療機関の中で自分の自由意志で選択できるチャンスが与えられている事は大変有り難いことである・・・とは思います。

でも・・・なのである。
治療をするか、しないか・・・、さらに治療をするにしてもどの医療機関で治療をするのか・・・はもちろん自分の意志で選択し決定できる。
このような自由に決定できる時に、人生を左右する、あるいは命に関わる病気を患った場合にはいったいどうしたらいいのでしょうか?

選択の自由は、いっぱいあります。
インターネットで検索すれば、医療機関のリストは無数に出て来ます。
お金さえあれば、遠方の医療機関でも受診することが可能です。
時間があれば、セカンドオピニオンで意見を伺うことも可能です。
病気に関する知識も簡単に手に入り勉強することができます。

それはそれで有り難いと思いながら・・・
その平面的な情報をどうやって選別して如何にして軽重を付けて有益な情報として重層化したらいいのでしょうか?

重層化するとは、情報が有機的に幾重にもつながっているということです。
一つ一つの情報が、ばらばらでは、最終的に決断する時に一つの情報だけに引っ張られてしまう。
自分の気に入らない情報は排除し、自己に都合のいい情報ばかりが頭に残るため選択の幅が大きい反面、その幅の中から自分に適合する中心を見つけ出すことは至難の技になるでしょう。

先日、ある女性患者さんの頭部 MRA 検査で未破裂脳動脈瘤が、発見されました。
その方は、大変聡明で勉強熱心、いろいろな情報を仕入れてセカンドオピニオンの助言を求めて病院巡りをされました。

ある医者からは、手術を勧められて不安に怯え・・・
ある医者からは、保存的療法を勧められて安堵する・・・。
その助言者の立つ位置によって患者さんの気持ちがその方向に引っ張られる。
助言者の意見によって大きな振れ幅の中で振り子のように揺れ動くその気持ちは察して余りあります。

疾患が、悪性腫瘍などの命に関わる病であれば尚更手術がいいのか、放射線療法がいいのか、薬物療法(抗がん剤)がいいのか、その他の療法・・・それらのどの組み合わせが適切なのか、素人にはさっぱり見当がつきません。
有益な情報を選別して有機的につなげるのは、そう簡単にできるものではないと思います。

未破裂脳動脈瘤を抱えた聡明なその患者さんが最終的に下した決断は?・・・ そしてその理由は?・・・

「過去に手術によって合併症を引き起こした経験を率直に話した医者の元で手術を受ける」と。
どんな医者でも神様でない人間が医療を行なっていると人には言いたくないスネに傷があるはず「自分の隠したい過去をさらけ出したそんな誠実で正直な姿勢に自分の運命を託してみます」と。

一方、その医者は、疾患に応じたデリケートさはあっても特別に個々の患者さんを区別して対応しているという意識は、たぶんないでしょう。
そして、いつもと変わらぬ誠実で正直な対応を通じてそれぞれの患者さんが、一点のきらめきと活力を出してくれれば嬉しいと思っていた事でしょう。

 “誠実 sincere ”とは、本音を通すとういうこと
 “正直 honest ”とは、嘘を言わないということ

でもそれは、医師として・・・
基本的で当たり前の資質であると思います。
何故ならば、患者さんは・・・
『選択できる幸せ』を享受する反面『自己責任の重さ』に耐えているのですから。

そんな基本的で当たり前の医療人の生き方がusual (いつも)で ordinary (通常)に common (普通)でありたいと願います。

2009.2.22

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